むかしむかし、その昔、栃ヶ原の柿の木坂に1匹の古狐が棲んでいました。この狐が時々人を化かすので、村人や旅人は大変迷惑していました。
勇気のある村人はもちろん、旅人の中にもこれまで何度となく古狐を退治に出かけましたが、その度に逆に化かされて帰って来ました。
「清助どんが、また狐退治に失敗したそうだ。」
「仙兵エさんがやられたそうだ。」という話が伝わるたびに、村人たちは一層恐れおののき、不安な毎日は続いたといいます。
その頃、村の庄屋”おまえ”という家に、藤五郎という若者がいました。ある日の夕方藤五郎は、鍋と一反木綿の帯を持って柿の木坂へと向かいました。
「おらバサ(うちのお婆さん)はお寺参りに行ったんだが、馬鹿に(すごく)遅くならんばいいが・・・。」と、独り言を言いながら「ばぁーさ(お婆さん)。ばぁーさ。」と、大声で呼びました。
しばらくすると「おお、藤五郎だかや。よう来た、よう来た。迎えに来てくれたかや。」と、藤五郎の祖母にそっくり化けた古狐が、枝を突きながら柿の木坂を登って来ました。
藤五郎は、祖母にそっくり化けた古狐に「お寺への往復じゃくたびれた(疲れた)ろう。俺にばれらっしゃい(おんぶされなさい)。遅くなると思って帯も持って来たすけ。」といって、用意してきた一反木綿を帯にして、この古狐を背中にグルグルに縛りつけ、歩き出しました。
村が近くなるにつれ、背中にグルグル巻きに縛りつけられたこの古狐も不安になり動き出すので、藤五郎は用意してきた鉄鍋を頭にかぶって狐の攻撃に備えました。

〜”狐の夜祭り”のモチーフとなったお話です。〜
〜幻想的な狐のおどり〜

