漆島の十杜の境内に”しゅうじん宮”と呼ばれる祠が五つ並んでいます。漆島地区の人たちは、この祠を水難よけの神様として信仰しているそうです。それにはこんないい伝えガあります。

 むかし「おまえん」という庄屋がいたそうです。ある日、その家の男がすぐ前の鯖石川へ馬を洗いに行った。そしてその馬を馬小屋へ入れようとした時、馬はいっこうに馬屋へ入ろうとはしませんでした。男が不思議に思って馬屋を見回したところ、馬屋の入り口に飼葉桶が伏さったその下に何かがうごめいていました。家の人が桶を取ってみると中から”しゅうじん”(水の中に棲み、人を水の中に引き込んでしまうという想像上の生き物。河童のことです。)が、ブルブルと震えて小さくなっていました。
 男が「どうしてこんな所に来たんだい?」と聞くと”しゅうじん”は「馬の尾につかまって家の近くまでついて来ましたが、ひょっとしたはずみで頭の上の水がなくなってしまい全身の力がなくなってしまいました。それで仕方なく先に馬屋へ入り桶をかぶって隠れていたんです。」といいました。
 異様な形の”しゅうじん”に男は殺してしまおうと思ったそうです。”しゅうじん”は手を合わせ「どうか命だけはお助けください。その代わりこの漆島では人の命を取らないことを約束します。」と懇願しました。かわいそうに思った」男はそのまま”しゅうじん”を川へ放してあげたそうです。それから7日間「おまえん」の家には川魚を串にさしたものが7串、毎日届けられたということです。
 村の人たちは、意思の祠を創って”しゅうじん”との約束のしるしとして、また水神様としてお参りをしているそうです。そして、この約束が守られているのか漆島ではその後、めっきり川での事故が少なくなったということです。
 荻ノ島にある釈迦堂は、室町時代末期に創られたと伝えられています。荻ノ島はその頃、旅人が来ても泊まるような家が無かったので、旅人はこのお堂で一夜を明かすことが多かったといいます。しかし、このお堂では昨夜泊まったはずの旅人が翌日にはいなくなるということがしばしばあったそうです。しかも、着物や荷物をこのお堂に残したままいなくなり、何者かの仕業かもわからない事件に村人たちは不安に思っていました。
 ある夜、ひとりのたび美地が村人たちが止めるのも聞かず、一夜このお堂に泊まりました。
 夜も更けて、ひとりで淋しくなって火を焚きあたっていると、どこからともなくひとりの老人がここへやって来て旅人に話しかけました。旅人も淋しい上に退屈していたので、世間話を始めました。お堂の中は火がトロトロと燃えて、ちょうどいい具合に暖まり二人とも体がポカポカしていい気分になっていました。そのうち、老人は話の途中でウツラウツラ居眠りをしては話を戻し、居眠りしては話を戻し、・・・後の方には変な物を出し始めました。
 旅人は始め、それが何かは見当もつきませんでしたが、注意してよく見てみるとどうも動物のしっぽらしいことに気がつきました。「こいつは変だぞ、ひとつ本物かニセ物か確かめてみよう。」とイタズラ気を起こした旅人は、真っ赤に燃えている薪を火箸で取り、シッポと思う物の上に置いてみました。
 すると、今までいい気分になっていた老人は、奇声をあげて飛び上がり、逃げていってしまったそうです。
 旅人に危害を加え、はては命まで奪った怪物の正体は年老いた大狸だんたということです。